「大きな一歩」 受動喫煙防止条例成立
2009年3月26日 提供:読売新聞
違反者確認など課題残る
受動喫煙による健康被害から県民を守る目的で24日に成立した「公共的施設の受動喫煙防止条例」。屋内での喫煙を規制する全国初の条例として来年4月に施行される。県が譲歩を重ね、目指していた全面禁煙から大幅に規制を緩和したが、医師らは「大きな一歩」と評価する。一方、規制される飲食業者らの不満は根強い。違反者の確認体制など課題も積み残されたままだ。(松本英一郎、野村順)
「日本は、たばこ対策後進国。率先して受動喫煙防止に取り組んだ意義は大きい」。医師らでつくる「禁煙、分煙活動を推進する神奈川会議」会長の中山脩郎・県内科医学会長は、健康増進法は受動喫煙防止に向けた努力義務を定めているのに過ぎないだけに、罰則付きの条例を歓迎する。
中山会長は「ほかの自治体にも広がるはずだ」と期待する。松沢知事によると、他都道府県から相談が複数寄せられているという。
規制を受ける事業者側は不満を抱きながらも、1年後に迫った条例の施行に対応しようとしている。
条例に反対していたという県旅館生活衛生同業組合の江成尚男副理事長は、「受動喫煙対策を積極的に進めていることをアピールして、県外からも多くの客に来てもらえる体制づくりを進めなければ」と話す。県喫茶飲食生活衛生同業組合は「条例について大半の店が詳しく知らないはずだ」として、条例の勉強会を開くことも計画している。
ただ、条例の内容には、疑問を投げかける事業者も多い。県が当初、2月定例県議会に提出した条例案では規制対象だった全宿泊施設のうち、床面積700平方メートル以下は対象から外れた。それでも、宿泊施設の約半数は規制対象となり、業界団体は「不満を和らげようとする小手先の修正」との声も漏れる。
知事が最もこだわった罰則では、違反者の確認方法や過料の徴収体制はまだ決まっていない。罰則適用施設は約18万か所。来年度、たばこ対策にかかわる県職員は50人に過ぎない。「通報がどれだけ寄せられるか見当もつかない。増員も簡単ではない」と鈴木吉明・たばこ対策担当課長は言う。
県はポスターなどを公共施設に配って周知するほか、分煙方法などを示した冊子の配布、施設の管理者への説明会も開催する。県内9か所の保健福祉事務所の補助スタッフ18人の募集をさっそく始めた。
「箱根温泉旅館若手経営者の会」の勝俣憲一代表は「客の7割が県外から。県外にも条例を分かりやすく周知する必要がある。旅行会社が申し込み客に説明するなど徹底してくれないと困る」と指摘している。
※罰則は、施設の管理者は2万円、個人には2000円の過料