昨日の朝、NHKラジオ(長野県)の健康百科のコーナーでお話をさせていただきました。テーマは『噛む効果』です。以前、ブログにも書きましたが放送終了後、聞いてくれた数名の友人から「声云々、ボー読みっぽかったとか、素人っぽかったとか、は置いといて、けれど内容が結構面白かったので字になった情報が欲しい!」という依頼がありました。従いまして、放送では言い尽くせなかった内容も含めて以下に内容を掲載致します。
よろしかったら参考にして下さい。
肥満防止 …
 早食いの人には肥満が多いと言われています、脳の中の視床下部と言うところに満腹中枢と言うところがあります。ここは食事によって上がる血糖値を感知する役目がるのですが、血糖値は食事開始から徐々に上がっていきますので早食いの人は血糖値がピークに達するまで、必要以上に食べ続けてしまいます。結果過食となり肥満になっていきます。ゆっくり味わって噛むことによりちょうどいい食事量が自然に分かると言う訳です。また、よく噛むとヒスタミンと言う物質が脳の中につくられることが分かってきました。このヒスタミンは、食欲抑制や、内臓脂肪の燃焼促進効果が認められていますのでよく噛むことは肥満防止につながります。
味覚の発達を促す 
味わうと言うのは食べ物を噛んで唾液と混じり合わせることで味覚として感じることです。そして唾液に溶けこんだ味覚物質が舌の表面にあるセンサーで「甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、旨い」などの味を感じることができます。よく噛むと、例えばするめは噛めば噛むほど味が出ますね。こういう直接的でない複雑な味わいが味覚を発達させてくれるのです。
言葉をはっきり 
歯は発音と非常に密接な関係があります。た音、さ音は歯がなくなってしまうと明瞭に発音しにくくなります。また声を出して発音することは口のまわりの筋肉が鍛えられてこそ、できることなのです。従って噛むことで筋肉が鍛えられてはっきり発音できると言う訳です。
脳の働きを活発に …
よく噛むことで脳の働きを活発にするということが分かっています。よく噛むことで脳の広い領域が活性化しているということが確かめられています。
噛めなくなった寝たきりの高齢者が、入れ歯を入れることによって食事を口から十分とれるようになり介護度が減少したとか、褥瘡が改善したということは良く知られいています。実際に私の患者さんの中にもそういう方がおられます。自ら噛んで食事をする事は本当に大事です。
歯の病気防止、口臭防止 
よく噛むと唾液が多く分泌されます。この唾液はお口の掃除薬をしてくれていますのでよく噛むこと食事の際、食べかすを残しにくくするという作用があるのです。唾液にはいろいろな大切な役割があるのですがリゾチーム、ラクトフェリンなどは口の中の細菌の増殖を防ぐ役割をしています。
がんを予防 
噛むとがん予防になるって本当?って疑いたくなると思いますが事実なのです。
食品に含まれている様々な添加物の中には発がん性をもつと言われているものがあるのですがよく噛んで唾液と混じり合わせることによってその発がん性を不活性化するのです。唾液の中のペルオキシダーゼと言う酵素が発がん物質が作り出す活性酸素に作用すると考えられています。毒性が10分の一くらいに薄めるためには一口30回噛むと理想と言えます。(西岡一先生論文に詳しく出ています)
胃腸の働き促進 
よく噛むことによって食品は細かく砕かれ食物の面積は増大します。そこに消化酵素であるアミラーゼ等が混ざりますから、消化吸収を口に食物がある段階から始められるというわけです。その結果、胃腸の吸収を助けることになります。歯の治療の際、噛めなくて胃腸が悪くなったと訴える患者さんは結構多いですね。
全身の体力向上とストレス解消 
人間も動物です、野生動物にとって噛むことはイコール生き延びることなのです。人間も噛むことによって体力が向上し、おいしく楽しく食べることでストレスを発散しているのです。
Q なるほど!語呂で覚えていくとふとした時に思い出せますが
 よく噛むために日ごろから気をつけておくことは何ですか?
A.歯を失う2大疾患と言われているムシ歯と歯周病は、いわゆる細菌感染によって起こる病気です。従って原因の細菌がコントロールできれば予防できる病気ということになります。でも現実にはムシ歯や歯周病は多くの方々がかかっている病気です。ということは、お口の中を清潔に保つこと、清潔に磨き上げることが非常に難しい病気ということになりますね。従ってお口を清潔に保つにはブラッシングのテクニックを向上させることは、勿論大切ですが、かかりつけの歯科医院で定期的にチェックを受け、お口の中の清潔さを維持することがいちばん重要だといえるのではないでしょうか。
食の字は「人に良い」と書きます。しっかり噛んで食事を楽しみ健康で過ごしたいものですね。