ディートリッヒ・ブクステフーデ(DIETRICH BUXTEHUDE1637頃~1707)は、デンマーク(現在はスウェーデン)生まれ、その後北ドイツのハンザ都市リューベックの聖マリア教会で40年にわたりオルガニストとして活躍しました。バッハ以前の最大のオルガニストであり,かのバッハ(J.S.Bach1685~1750)の憧れの作曲家でした。
リューベックでのブクステフーデの「夕べの音楽(アーベント・ムジーク)」と呼ばれた教会での演奏会は年5回開催されました。この演奏会は大変な好評を博し、アルンシュタット時代の21歳のバッハが教会オルガニストの仕事を一ヶ月の約束で休暇を取り、わざわざそれを聴くために徒歩ではるばるブクステフーデのもとに出かけました。片道なんと450Km。ところがあまりに約50歳年長のブクステフーデの演奏が素晴らしかったため、その期間は4ヶ月以上となりリューベックに長期滞在という事になってしまいました。その間,ブクステフーデは若きバッハに己のすべてを教え込んだそうであります。というより自分を超える若者との時間を老巨匠も楽しんだようです。この出来事は1706年のことですから、まさに老巨匠はドイツオルガン音楽の将来に対して安心してこの世を去ったのではないでしょうか。このカンタータはブクステフーデの傑作のひとつと言われています。バッハがお手本にするのもよく分かる(なんちゃって)素晴らしい曲です。
ルネ・ヤーコプス指揮 コンチェルト・ヴォカーレの演奏です。声楽のソリストは皆素晴らしいですがNo.88で紹介したアンドレアス・ショルの美しいカウンターテナーも聞きものです。
HMA 1951333