このCD紹介もいよいよ少し目先を変えていく時期が来ているのかもしれません。一応のルールとして18世紀以前を謳ってきましたが、考えてみれば19世紀、20世紀にもすてきな音楽はある訳で、実を言うとその時代のCDの方が多かったりしている訳です。今回、特にお気に入りのCDを紹介致します。歌好きの方にはたまらない一枚です。スーザン・グラハム(SUSAN GRAHAM 1960~USA)の歌うアーン(REYNALDO HAHN 1875~1947)歌曲集です。フランスの香りぷんぷんの?粋でかつ構成のしっかりした極めて純度の高い歌曲集になっています。スーザン・グラハムですが、1999年のSKF(サイトウキネンフェスティバル)のオペラ『ファウストの刧罰』で主人公ファウストの愛するマルガリータを文字通り好演したメゾソプラノです。本当にすばらしい歌唱力の持ち主です。会場で聞いた彼女の声が瞬間に気に入ってしまい、出ていたCDを即購入したという次第!
 ちょいと作曲者のアーンについてご説明します。アーンはドイツ人の父親(事業家、外交官?)と スペイン バスク地方出身の母との間に、南米ベネズエラの首都カラカスで12兄弟の末っ子として生まれました。南米では王族のような暮らしぶりだったそうです。3歳の時にパリに移住、上流社交界の常連となりました。音楽的にはまさに神童だったそうで、故ナポレオン3世の従妹マティルド公女のサロンに6歳でデビュー、ピアノの弾き語りでシューベルト、オッフェンバックの歌曲をボーイソプラノで歌いたちまちサロンの寵児となりました。当時の巨匠マスネに認められ終世アーンを庇護しました。サンサーンスにも師事しました。長じて、美声と数カ国語に通暁する巧みな話術、才知にあふれた豊かな教養、洗練された物腰で貴婦人たちを魅了し、各界の名士たちとも親しい親交関係を築きパリ・オペラ座の指揮者として、またザルツブルグ音楽祭でもモーツアルトの指揮者として名声を上げ、大戦終了時には芸術アカデミーの会員に選出、パリ・オペラ座の総監督、フィガロ紙の評論家として文筆活動としても知られたそうです。凄い経歴の持ち主ですね、、唖然!1947年に脳腫瘍のため死去。人間の声を最高の楽器と考え最高度に尊重した詩と美しい旋律の親密な統一こそ芸術の極致とした作曲家であり125曲を数える歌曲はいずれも美しい旋律で、出来ています。スーザンはその中から24曲を精選し美しい歌声を聴かせてくれています。
いやー、美しい!こんな風に歌えたら最高です。
SONY RECORDS SRCR 2357