いよいよ、院長趣味のページがカウント40を迎えます。10項目毎に、ちょっと特別なCDを置いてきましたが、今回も特別な一枚をご紹介します。武久さんの、ゴールトベルク変奏曲です。38~34でずっと武久さんのCDを続けてご紹介してきましたが、ここに極まります。この超有名な変奏曲は「クラヴィーア練習曲集第4巻」として出版されました。この曲の生まれたわけが逸話として残っています。バッハの弟子のJ.G.ゴールトベルクが仕えていたカイザーリンク伯爵は毎夜の不眠症に悩んでいました。伯爵はゴールトベルクに音楽で何とかならないものかと不眠症に効く?曲を作るように命じました。困ったのは当のゴールトベルクです。早速、師匠のバッハに相談します。そして、弟子のために一肌脱いで出来上がったのがこの変奏曲集ということになっています。おかげで、ゴールトベルクは、その名を歴史に残すことに相成りました。
 曲は、4分の3拍子のゆったりしたアリアとそれに続くさまざまな様式による、技巧の限りを尽くした30の変奏からなります。
この曲のCDは世の中に数多ありますが、このチェンバロによる武久さんの演奏は歴史を変えたといわれるグールドのそれよりも深く意味のある演奏に思えてなりません。
 再び、ご本人の言葉を引用させていただく。
「録音を終えた時、このような素晴らしい曲がこの世に存在し、それを、ある緊張感を持って体験し得たことに対する、言い尽し得ない感謝が心に満ち溢れていた。ただ、恵みによって私の中に起こされた愛が、この偉大な作品にほのかな良い香りを添えるものであって欲しいと願うのみである。」
これほどまでに深い、優しい、清冷なバッハを私は知りません。
ALCD-1013