「コンサートピアニストなんて世界に20人もいれば十分なのよ、それ以上いても仕事なんて無い訳!」っていう文章を宮部みゆきか東野圭吾の小説で読んだ覚えがああります。うーん確かに、世界中のクラシックのコンサートでピアノコンチェルト或はソロのコンサートがどのくらいの数あるか知る由もありませんが、いわゆる一流と称される方々のコンサートにおいてはこのくらいの人数がいれば確かに需要はまかなえるのでは?と納得してしまったのを覚えています。ということは一流のピアニストってのは一国の宰相より数がはるかに少ない職種ということになります。子供の頃からピアノを習わされている(あえて受け身型)子供たちは星の数ほどいて、その中から大多数が落ちこぼれたり、他の道?に移ったりしますが、でも音大のピアノ科というところに入学する方達も結構いる訳です。その人たちが卒業してみんなコンサートピアニストになれるのかと言えば答えはノーです。ピアノの演奏だけで暮らしていけるピアニストは宇宙飛行士並みの確率なのかもしれません。僕は、プロの音楽の世界を知りませんが、とにかく音楽で食っていくのは並大抵のことではないことはよく分ります。
 さーて、今回は、昨日の興奮覚めやらぬと言うことで内田光子さんのモーツアルトのピアノソナタ全集です。実は、内田さんは昨夜、松本市芸術館で、サイトウキネンフェスティバルのプログラムでピアノソロコンサートでそれは素敵な、素晴らしい、情熱的なピアノを聞かせて下さったのです。プログラムの内容は、モーツアルト、ベートーベン(No.32ソナタ)、武満徹、他。
内田さんのピアノの音は信じられないくらい透き通っていて奇麗です。音の一つひとつが宝石のように輝いてると言いますか、、、ほんとなんです。これが、、、ですから、モーツアルトのソナタを内田さんで聴くと本当に心地よいのです。素敵ついでに書かせていただくと、内田さんって写真で見ると少し冷たいような、、なんかさめたような印象を受けるのですが、演奏が終わったあとのお辞儀は、多分身体も鍛えておられるのでしょう、ピコンと身体が折れ曲がるくらいまで軽々と、そして素早く伸びきったあとは凄く可愛い(失礼)笑顔で観客に答えてくれるのです。とっても素敵な方だなと思いました。会場には、小澤征爾総監督も鑑賞に来ておられまして、スタンディングオベイションされていました。納得の拍手です。まあとにかく、至福の時間を過ごさせてもらったのは事実で、これほどのピアノコンサートは滅多に聴けるものではありません。とにかく、ぶっ飛びの演奏会でした。その内田さんが1983~87年にかけて全曲レコーディングしたのがこのCDです。今年は、モーツアルトの生誕250周年です。内田光子さんのピアノソナタ全集、全集でなくても1枚でも構いません。1度聞いてみて下さい.深さ、優しさが分ると思います。
そして内田光子はまぎれも無く世界の20人いえ、5人の中に入るピアニストです。
18世紀を気にして現代のピアノは紹介を遠慮していたのですが、時代は18世紀末!カテゴリー違反ではないですし、何しろ今日は内田光子さんのモーツアルトを心からご紹介したくて書かせていただきました。
PHCP-2229~34 PHILIPS 6枚組