今まで知らなかった楽曲、それも結構古いものをという目的でCDを探します。そうすると特定のレコード会社(古い言い方?)がその意図に答えてくれることがあります。ここで紹介するのがharmonia mundiというフランスのレーベルです。こういったCDは演奏家の名前は多少知ってはいるものの、曲自体は聞いたことがありませんので実際に買う時には清水の舞台とまではいきませんが、冒険をすることになります。最近のクラシックのCD事情を考えると廉価版がたくさん出ている中でこの値段は高いなーと思いながらの選択ですので、信頼できるレーベルがあるのは非常に心強いです。
 さて、作曲者のジャン=フェリ・ルベル(1666~1747)はヴァイオリニストであり、ハープシコード奏者、作曲家で、1700年代前半のパリで傑出した音楽家として長く活躍しました。ルベルの名はバレエ曲「四大元素」と言う曲の冒頭の不協和音で有名?です。実際に聞いてみると「おっと、この和音を18世紀前半に?!」と思うくらいなのです。実を言いますと、このヴァイオリンソナタを聴いて、あまりにもフランス的な奇麗さで、じゃあ他のCDも買ってみようと買ったのが「四大元素」でした。翌日診療が始まる前にこのCDをセットしどんな甘美な調べが、、と思った瞬間、出てきた音はスタッフの目を白黒させるものでした。それほどの不協和音でした。それ以来「四大元素」は待合室で流れることはなくなりました。

話がそれました。そのルベルですが、歴史的に見て影が薄いのだそうです。と言うのは時代の巡り合わせで著名な芸術家が顔を揃えていた時代に生きてしまったそうで、現存する唯一の肖像画は、ルベル本人よりも画家アントワーヌ・ワトーの名前で知られるようですし、死んだ後も同じ納骨室に眠る劇作家ジャン・ラシーヌの陰に隠れることになりました。まあそうは言っても、やはり天才だったようで8歳の時に天才ヴァイオリニストとして国王と後の師匠になるあのリュリを感動させたと言われています。そのルベルの最高傑作といわれているのがこのヴァイオリンソナタ集です。正確な名称は「ヴィオールの独奏パッセージを含むヴァイオリンのためのソナタ集」(1713)

演奏しているアンドルー・マンゼ(ヴァイオリン)
      リチャード・エガー(ハープシコード)
      ヤープ・テル・リンデン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
の3人はまさに名人。典雅で流麗な作風のこのソナタの魅力を引き出しています。まさに「音の美術品」です。

KKCC-421(HMU907221)