3章 子どものおやつ
1)子どものおやつは4回目の食事
●「おやつ」はあくまで食事
子どもの小さな胃袋では成長や運動量に見合うだけの食事を3回で摂ることができません。そのため朝・昼・晩の3食以外に食事が必要になります。それが「おやつ」です。
「おやつ」という言葉には、お菓子を食べるという意味はありません。あくまでも食事をすることを指します。手間ひまかけなくても作ることができる食事といえば、おにぎりと水が一番です。おにぎりならおかずがなくても食べられますし、お金も手間もかかりません。さらに、食物添加物の心配もいらず、しっかり満腹になるためあとを引きません。その点、お菓子やジュースなどは軽いため、いくら食べても満腹にならず、ダラダラと食べ続けることになってしまいます。
●子どもは甘い物が好き
子どもが甘い物が大好きなのは、本能といっても良いでしょう。なぜならたいがいの甘い物は最もきれいな熱量源である糖質を含んでいます。また、乳幼児はいろいろなものを口にしてしまい危険なこともあります。その際、酸っぱい物、ぬるぬるした物、苦い物、においの強い物を好んだら、良くないことが起きる可能性が高くなります。甘い物は万が一拾って食べても危ないことが少ないのです。
●「甘い物=砂糖」ではない
したがって子どもが甘い物を好むのは悪いことではありません。ただしそれは「甘い物」であって「砂糖が入った物」とは限りません。子どもはトウモロコシ、甘栗、さつまいも、すいかなど自然の甘いものが大好きです。しかし大人を幸せにしてくれるのは、まんじゅうやケーキ、チョコレートなどの「砂糖」ということが多いかもしれません。
「たまには食べさせないと子どもがかわいそう」という母親がいますが、実は子どもがかわいそうなのではなく、天然の甘みでは満足できない自分がかわいそうなのです。
2)むし歯と食生活の関係を切ってはいけない
●脳は大食漢
私達が勉強したり考えたり記憶する時に働いているのは「脳」です。しかも脳は体重の2%程度しかないにもかかわらず、全エネルギーの18%も消費する大食漢の臓器なのです。のうはブドウ糖のみをエネルギー源にしています。これまではそのブドウ糖をご飯を中心としたデンプンで摂っていました。デンプンはエネルギー源として即効性はありませんが、血糖値は緩やかに上昇し、緩やかに落ちていくので「腹持ちがいい」ということができます。
ところが最近、このブドウ糖を甘いお菓子や清涼飲料水などで摂ることが多くなっています。砂糖や異性化糖は非常に消化吸収が速く即効性はありますが、血糖値が下がるのも速いという特徴があります。
私達は食べ物を食べていない時も脳を働かせ、身体を動かすことができます。それは肝臓や筋肉の中に「グリコーゲン」という動物性のデンプンを貯蔵しているからです。しかしあまりにも吸収の速い清涼飲料水などで熱量を摂っていると、グリコーゲンは増えないのです。脳に十分なエネルギーがいかなければ、考えることも記憶することも集中することもできません。それだけでなくイライラしたり、いわゆる「キレる」状態になったりすることも有り得るのです。
●口は災いの元
1987年、家庭の食料費はお菓子が米を超えてしまいました。それほど砂糖や異性化糖の入った食品が日常になっているのです。砂糖や異性化糖を摂取し始める時期があまりにも早すぎるので、精神的な問題や肥満、糖尿病が増えるのも当然です。
きちんと食事をしないで砂糖の入った食品ばかり食べていると、むし歯になる可能性が高くなります。歯科医療のおかげで生命を脅かすことこそありませんが、非常に痛く、つらく、不愉快な病気です。お菓子を習慣的に食べさせている親も、お子さんがむし歯に苦しんでいたら、さすがに「こればまずい」と考えるでしょう。むし歯が食生活を見直す大きな動機になると思うのです。
3)清涼飲料水は恐い
甘みは体温に近くなるほど強く感じるのです。そのため冷たい飲み物などは大量に砂糖が入っていてもそれほど甘く感じません。そのためご飯を食べながらでもジュースは飲めてしまうのです。その中で最も危険なのはイオン飲料(スポーツ飲料)あるいは乳酸菌飲料でしょう。これらは炭酸飲料水などと違って「健康のために」飲ませている母親がいるからです。
最近は本来なりにくいはずの前歯にむし歯ができる子どもが増えてきています。患者さんに食生活指導をする場合は、極端な表現ですが「お子さんにはたまには甘いお菓子を食べさせてもいいでしょう。しかし清涼飲料水は飲ませないようにしてください」という指導が必要かもしれません。
4)スナック菓子も恐い
スナック菓子もまた強烈な味付けがされているため、ほとんど咀嚼しなくても食べられる食品です。最近のスナック菓子の成分表示を見ると、脂質が30~40%も含まれています。これでは天ぷらの衣を食べているようなものです。もちろん砂糖も使われています。スナック菓子はご飯をお腹いっぱい食べたとしても食べられるのです。
一年中走り回り、忘年会も新年会もないのが子ども達です。出張もないのですから外食も多くありません。それにもかかわらず、肥満や糖尿病の子どもが増加しています。どのように考えても清涼飲料水とスナック菓子を除いて考えることはできません。やはりこの2つは別格に指導する必要があります。