1章 現代の食生活
1)食生活の欧米化が招いた2つの問題
①本来、私達は糖質を燃料として生きています。もちろんタンパク質や脂質が必要なことはいうまでもありません。しかし現代の食生活は急激に糖質が減り、タンパク質や脂質が増えすぎています。また、これまで私達は糖質のほとんどをデンプンで摂っていましたが、最近は砂糖や異性化糖などが急激に増えています。
②糖質・タンパク質・脂質は十分過ぎる程に摂っている一方で、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素が不足しがちです。
2)女性に多い脂質過剰の食生活の危険性
昼時のコンビニを見てみるとよく分かりますが、若い男性はたいがい弁当かおにぎりなどのご飯を食べています。それに比べて若い女性はスパゲッティ、サンドイッチ、菓子パンなど脂質の多いものを食べています。
脂質過剰の食生活が、若い女性に増えている生理不順、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮がん、卵巣がん、乳がんなどの女性特有の病気にも繋がっていることが明らかになりつつあります。
それらの疾患にはホルモンのアンバランスが関係しているといわれています。女性ホルモンであるエストロゲンは子宮、卵巣、膣、乳房などの発育を促進するなど、重要な働きをしています。しかし女性ホルモンが多ければいいというわけではありません。
例えば乳がんなどはエストロゲンが長期に渡って高濃度に維持されることが大きな要因だといわれています。エストロゲンはコレステロールが材料になっているので、脂質の多い食事を続けることは乳がんの危険性が増すことになります。
3)精製食品が招いた現代型栄養失調
●複合栄養素欠乏症
一昔前は、VB1が不足すれば脚気、VCが不足すれば壊血病というように、単一栄養素の欠乏症が多く見られました。したがって糠を食べれば脚気が、果物を食べれば壊血病が治ったりという栄養失調症がほとんどでした。
しかし現代の栄養失調の多くは、VCも足りなければVB2も足りない、CaもKも足りないというように、複数の栄養素が欠乏している状態なのです。また、私達が生きていくために必要な栄養素がすべて分かっているわけではないし、何が不足しているのかを調べる方法もありません。したがって、不足しているものが分からないので補いようもありません。補うことを考える前に、不足しないような食生活を心がけることが大切です。
●精製食品だらけの食生活
現代の栄養失調の原因に、精製食品があまりにも増えすぎたことによって微量栄養素が摂れなくなっていることが挙げられます。
そのような精製食品の1つに米があります。昔は米の精製度が低かったため、研いでもぬかや胚芽が残っていました。その部分にこそ大切なビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれているので、その米を主食にすることで身体に必要な栄養素のかなりの部分をまかなうことが可能だったのです。
●三大精製食品
現在の食生活は一見豊かそうに見えますが、精製食品だらけの「多種多量低品質」の食生活ということができます。その中でも私達に大きな影響を与えるのが「輸入小麦粉」「砂糖類」「油脂類」です。
小麦粉をそのまま粉にしたものを全粒粉と呼んでいます。米と同じでそれらには胚芽やふすまがついていて、ビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれています。ところが私達が口にする小麦粉はほとんどが精製されているため、大切な微量栄養素が捨てられています。
油脂類は精製食品として特に大きな影響があります。油はゴマや菜種、大豆、トウモロコシなどを絞って作られていますが、ゴマも大豆も本来はいろいろな栄養素が含まれた自然な食品です。しかし絞ることによって大切な栄養素が捨てられることになっています。
●パンはファーストフード
ファーストフードは精製小麦粉と砂糖、油脂類を主原料としています。ファーストフードといえばハンバーガーやピザを思い浮かべる人が多いと思います。食生活に対する意識が高い人は、ファーストフードは良くないと思っている人が多いため、朝からハンバーガーやピザを食べる人はあまりいないでしょう。ところがパンの場合は毎朝食べる人がいます。食パンをファーストフードとは考えていないのです。
しかしパンの材料は精製小麦粉、砂糖、油脂類などです。また、パンを食べる時はその上にバター、マーガリン、ジャムを塗ることが多くなります。副食も野菜炒め、マヨネーズやドレッシングをかけたサラダ、ハムエッグ、スクランブルエッグ、オムレツ、魚介類などもツナ缶、白身魚のフライ、マリネなどしか合いません。パンはまさに三大精製食品の塊=ファーストフードなのです。