ジャケットが非常に奇麗な絵で彩られています。見開くとこういう感じになりますクジャクの絵が印象的です。さて、こういうタイトルのCDなのですが非常にユニークだと思いませんか?こういうくくりで編集されたアルバムは未だかつて、、私の記憶にはないような気がします。
<収録曲目>
W.A.モーツアルト(WOLFGANG AMADEUS MOZART 1756~91)
                        交響曲第20番ニ長調KV.133
J.C.バッハ(JOHANN CHRISTIAN BACH 1735~82) 交響曲ニ長調 作品18-4
C.カンナビヒ(JOHANN CHRISTIAN INNOCENZ BONAVENTURA CANNABICH          1731~98)                 交響曲第63番
W.A.モーツアルト  交響曲第31番「パリ」KV.297(300a)1782年初版稿
  
 の4曲です。
交響曲大好き人間の私にはとても好ましいCDの一枚です。さて、このCDのライナーノート!
面白いこと、知らないことが一杯書いてあります。従いまして、パクった情報をえらそうに書くのではなく素直にこのライナーノートから拾わせて頂きます。本当に勉強になります。
森鴎外がはじめて邦訳したとされる「交響曲」(Symphonie,symphony,sinfonie,sinfonia)は語源とされるギリシャ語のΣΥΝΙΗΟΝΕでは「響き合う」というような意味で、古くは器楽、声楽を問わず広く多声部の楽曲を示す言葉であった。後にオペラやカンタータ等の中での器楽のみの合奏の部分をシンフォニアと呼ぶようになり更にはそれらの曲の開幕を告げる器楽合奏曲=序曲を特に指して呼ぶようになった。一方でoverture(意味は「開くもの」いわゆるフランス風序曲)も教会音楽や室内音楽で盛んに用いられたが、急・緩・急の3部構成を持つイタリア風序曲がナポリ派オペラの隆盛と共に広く普及し、これがやがて交響曲という独立したジャンルに発展していくのである。19世紀以降オペラと並んで作曲芸術の中心的なジャンルとなっていく交響曲はその直接の出自を演奏会の開幕を華々しく告げる「序曲」に持ち、今回本CDに収録したニ長調の交響曲達は正にそのような祝祭的で機会音楽的な実用性を色濃く持つ一方で、独立した芸術作品としての交響曲というジャンルヘの機知に富んだ萌芽も時折見せる。そもそもそれまではほとんどあらゆる作品が、様々な機会のためにつくられた実用音楽であった訳だが、そうではない音楽のあり方が作曲家の潜在意識に芽生え、ヨーロッパ音楽の劇的な変化が始まろうとしていた時代が1770年代であった。~後略~(なるほどなるほど、、こういう意図でこのCDは企画された訳なのですね!そして偶然と言いますか、ベートーベンが1770年に生まれています。なんか偶然だけではないような、、、、)  ( )の前がこのCDの指揮者であり音楽監督、諸岡範澄氏の解説文の冒頭であります。この後に本来音楽が持つ熱き情熱と演奏者の情念を語ってくれています。
続いて安田和信氏の解説より。「鼓舞する交響曲」というタイトルがついています。
前略~絶対に欠かすことのできないオードブルやデザートのようなものとして、18世紀の人々はシンフォニーを考えていたのである。  従って18世紀はそれ以降の人々には想像を絶するほど、大量のシンンフォニーを消費していた。この時代に書かれたシンフォニーのレパートリーをロシアからアメリカ大陸に至るまでくまなく調査した学者ヤン・ラルーによれば、その数はヨーロッパ世界(植民地なども含む)で1500人の作曲家、16558曲にものぼるという。資料が現存するだけでこの数であり、実際には更に多くのレパートリーが生産されていたことだろう。現存する作品は嬰ヘ長調と変イ長調を除く22の調性を使用しているが、もっとも好まれている調性は、ニ長調であった。その数は5100曲余、全体の30%を占め、2番目に多いハ長調の2200曲余を大きく引き離している。18世紀の後半は、異常なほどに長調が偏愛されていた時代であり、短調のシンフォニーをすべて合わせても1000曲余、6%を占めるに過ぎず圧倒的大多数が長調で書かれている。その中でもニ長調作品の数的優位は揺るぎないものなのである。
なぜだろうか?この問いは様々な観点から検討する必要があるが、ここではとりあえず18世紀によく議論された”調性格論”に関連したニ長調への言説を、世紀の前半と後半から一つずつ拾いだしてみよう。
「元来は鋭利で気ままな調性で喧噪や陽気で好戦的なもの、元気を鼓舞するようなものにおそらく最も相応しい」(マッテゾン)
「勝利、ハレルヤ、戦争での雄叫び、勝利の喜びの調性。従って魅力的なシンフォニー、行進曲、祝祭的な歌、天上に向かい歓呼の声を上げる合唱曲などでこの調性を使用する」(シューバルト)~中略~すなわち、喜びに溢れ、活力に満ちたものを表現する調性というイメージである。~後略
いやー、勉強になります。そうだったのか、、と。しかし以前から思っていることなのですがこの調性をそういう調性で感じることができるためには絶対音感が必要なのでは?と言うことです。絶対音感があってはじめて調性の微妙な色の違いを感じることができるのではないかと。
従って僕のように絶対音感がない人にとっては調性の妙は正に絵に描いた餅ではないかと。ただし、絶対音感が無いからといって音楽が楽しめない訳ではないのですが。そういう意味で言うともっと音楽が持つ微妙な色合いを感じることができないことは残念ではあります。
CDそのものの話に戻ります。このCDを演奏しているオーケストラ・シンポシオン(Orchestra Symposion)は95年結成、時代楽器(ピリオッド楽器、その当時の楽器)を用いて演奏するオーケストラであります。若い力がみなぎる正にニ長調的な演奏を聴かせてくれます。コンサート・マスターの桐山建志さんはたしか長野県出身!生で何回か聞かせて頂いたことがありますがテクニックもさることながら人柄がよく分かるヴァイオリンを聴かせて下さいます。元気になること間違いなしのCDです。
ALM RECORDS ALCD-1033